うらら物語 その1 |
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春のおとずれが待ち遠しい、まだまだ寒い日が続く2月の終わりかけのころ・・・
お母さん お父さんの顔もまだ覚えていない、多分生まれて2ヶ月位の赤ちゃん犬の
うららは人の少ない山に捨てられました。
赤ちゃん犬のうららは食べる‘すべ’を知りません。でも、おなかはとてもすくし、山には
食べられるようなものはありません。寒さと空腹とそして人恋しさでとうとう山を降りて
行きました。少しいくと車が何台か止まっている駐車場を発見
そこには、お昼ごはんを食べている作業着をきたおじさんやお兄さんたちがいたの・・・
とてもいいにおいで美味しそうなお弁当・・「わ〜い、わたしにも食べさせて!」
しっぽフリフリ近づいて、おまけに「く〜ん、く〜ん」と泣いてみた
‘おいで、おいで’してくれたので「やった〜!」急いで近づいていくと
その人は、食べ物ではなく・・・・・・
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☆つづく☆ |
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うらら物語その2 |
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おじさんは、うららがそばまで来るとお弁当ではなく仕事で使っている接着剤を
かけてきたのです。小さなうららの顔や背中、お腹には接着剤をたっぷりとかけられた傷が
痛々しくできたのです。接着剤をかけられたところはヒリヒリして痛くて痛くて
どうしようもありません。うららはその場から急いで人のいない山にまた逃げ帰りました。
どうしてこんなことをされたのでしょう?それは誰にもわかりません。
ただ たとえ捨て犬や犬が嫌いであっても生き物をいじめたりするのは、
絶対にしてはいけないことなのです。
そして うららは傷だらけの体でどこか休める場所を求めて山の中を歩きました。
お腹もすいたままのかわいそうなうらら・・・
うららは思いました・・・初めて人間が怖いと・・・もう人間のそばには近寄れないと・・・ |
☆つづく☆ |
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うらら物語その3 |
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それからのうららはまた、一人ぼっちでした。
あてもなく山の中を歩き続けます。
山には少ないけれど家が何軒かあります。でもうららは人間に会うのがとても怖いので家には
近づかず家の 近くにある畑で食られる物があるか探しました。
だけれど、まだまだ寒い時期、うららが食べられるような物はありません。
たまに畑の隅に少し悪くなった野菜が捨てられていて、うららはそれを食べたりしていました。
うららにとってはとても大事な食べ物・・・食べれば空腹もまぎれます。
うららはそうやって人間に会わないように注意しながら、食べ物を探していましたが、それでも人間に
出合ってしまうことがあります。そんな時は一目散に藪や草むらの中に逃げ込むのです。
そうすれば、追って来ることはありません。
いつものように食べ物を探し歩いていたうららは、またしても人間に会ってしまいました・・・
うららは、必死で藪の中に逃げ込みました。そうすれば相手はあきらめて追って来ないと思ったのです。
だけど、今日は藪の中まで追っかけて来ました。
うららは怖くて怖くてしかたがありません。うららは藪の中で相手がどこかに行くのを小さな体を
丸めてまっていました。そのうち相手はあきらめたのか、物音が聞こえなくなりました。
「誰だろう?またいじめられるのかな?・・・」
うららはまだ治らない傷をなめながら思いました。・・・・・・
しばらくすると、うららは物音に気づきました。人間がやって来たのです。しかも二人の話し声が・・・
一人は男の人、一人は女の人でした。うららを探しに来たに違いありません。
「あっ!男の人はさっき追っかけて来た人だ・・・女の人は分からないけど、男の人と同じ
ニオイがする・・・それになんだかいいニオイもするな〜」
男の人と女の人は手にパンを持ちながら、藪の中に入ってうららを探していましたが、見つけること
できませんでした。
「あの人達、何だったんだろう・・・おいしそうな物を持ってたのは、わたしにくれるためだったのかな?」
さっきの人達は気になるけど、近づくのはやっぱり怖い・・・
また怖い思いや痛い目にあうのがイヤだから・・・
うららは寂しい気持ちでいっぱいでした。 そしてだんだん元気もなくなってきたのです・・・
☆つづく☆ |
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うらら物語その4 |
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仲間のいないうららはそれからも、毎日誰かに見つからないようにしながら食べる物を探しています。
だけどまだ小さなうららにはお腹がいっぱいになるほどの食べ物を見つけることはできないので、
だんだんと痩せていき元気もなくなってきました。
うららは藪の中でお腹をすかせながら、小さなからだを丸めているときに、ふと思いました。
『このあいだ私を追っかけた人たち、いいにおいの物持ってたな〜
おなかもすごくすいたし、もう一度遇えたらいいのに・・・』
うららは寂しさや空腹からか今まで怖くてしかたがなかった人間でしたが、この間パンを持って追いかけ
てきた人たちには遇いたいと思ったのです。
『もしかしたら、歩いていたら遇えるかも!』
うららは少しふらつくからだを起こし、藪の中から出て、歩きだしました。
あの人たちに遇いたい!そんな思いを胸にうららは少し元気を取り戻しあたりをウロウロとしました。
でも、その人たちには遇えませんでした。
そして小道を歩いていると向こうから車がきました。
うららは道の横に避けようとしたとき、その車はうららの近くで止まり、中から人が降りてきました。
この間の人だったら・・・とうららは思いましたが降りてきたのは違う人でうららはガッカリしました。
でもその人はうららを見つけると、
「おいで、おいで」っと言っています。
それから車から、また人が降りてきました。今度は子供が二人・・・
その三人の人たちはうららに近づこうと歩いてきました。
うららはどうしようかと迷いましたが、やはり怖くなって横の藪に入りこみました。
藪の外からその人たちはうららに声をかけますが、
うららはただ見つめるだけで藪の中からでることはありませんでした。
そしていくら呼んでもうららが藪の中から出てこないのでその人たちは車に乗って行ってしまいました。
うららはやっぱり人を見ると逃げてしまいます。
だけどうららは気づいたのです。
さっき遇った人たちもこの間の人たちとなぜか同じニオイがすることを・・・
『同じにおいのする人たち、この近くにいるのかな?また遇えるかな?』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そしてうららは決心しました。
今度は自分がその人たちを探そうと・・・このニオイをたどって・・・
小さいからだで食べる物もなくやせ細ってしまったうららですが、
この人たちを探すことで何かが変わるかもしれないと・・・勇気をふりしぼり
うららは小さな希望と大きな不安を抱えながら歩き出しました。
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☆つづく☆ |
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うらら物語 最終章 |
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うららは息もたえだえ、かすかな臭いをたよりに声をかけてくれた人達の家を
目指して、1歩、1歩・・・・・やっと勝手口の裏まで、そこで力つきます。
そこには使わなくなった小さなざぶとんが、・・・うららは、もう動けません。
それから数時間後、お母さんが見つけます。うららは仮死状態で息もしていません。
お父さんが来てお姉さん来て、もう助からないと思いつつも3人がかりで、さすって、
たたいて、身体を温めて、牛乳を温めて、助けようと必死でした。脱脂綿をミルクで
浸し、口を湿らせ、時間をかけて少しずつ・・・中々、反応はありません。
そして、・・・・・やっと少し唇が動きます。<助かるかも?>
しばらくして、・・・やっと、うららがうすく目あけます。 よ〜し!
助かった!良かった!バンザイ!
それから、泥だらけのうららをシャワーで洗い、お母さんとお姉さんはうららの身体に
ついたダニ取りです。100匹以上のダニ達がうららの血を吸っています。
うららは、必死で痛いのを我慢してました。じつは捨てられて放浪している時、黒い車
に乗っている人に、背中に接着剤を付けられていました。だから、シャワーで洗う時、背中の皮膚が全部剥けてしまったのです。かわいそうに!・・・・・人間って悲しいですね。手のひらに乗る位の小さな子犬に対して、そんな事が出来るなんて。今も黒い車に対して、
トラウマになっています。それから病院に行き治療してもらい、新しい毛も生えて、きれいなうららになりました。
うららかな春の日にお父さんに・うらら・と名前をつけてもらい晴れて,かんばん犬として、デビューしました。
その後,ベニちゃんが他家で飼われていたのが(3年6ヶ月)飼い主さんの病気の為、ここに貰われてきました。そして、その次の年、お見事、6匹の、♂ ばかりの
赤ちゃん産んだのです。ぎんがちゃんは天寿をまっとうし、天に召されました。
そして、もう1つ悲しい事ありました。うららの名付け親であり、この会社の
社長であるお父さんが、病気で天国に行きました。
今、現在、お兄さんが二代目社長として頑張っています。
そして、うららちゃん、紅ちゃん,壱くん,碧くん、4人(匹)で、かんばん犬として
日夜、頑張っています。うららは、今も、黒い車を見ると一生懸命吠えています。
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☆おわり☆ |
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現在のうららちゃん |
8年前のうららちゃん |
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